今回の記事ではアンモニアソーダ法の利点について解説します。
アンモニアソーダ法の利点
アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウム($Na_2CO_3 $)の工業的製法です。
1861年に考案されました。
ソルベー法という別名もあります。
考案した人がソルベーさんだったからです。
【アンモニアソーダ法=ソルベー法】炭酸ナトリウムNa2CO3 を作る製法です。電気分解が必要でないため低コストで生産が可能なので、工業的製法として用いられています。 pic.twitter.com/YGPGebEIqk
— 未知なる人間、遥かなる宇宙🌔 (@Orion_G7) April 11, 2022
具体的にはどんな反応かというと、
NaCl+H₂O+NH₃+CO₂ →NaHCO₃+ NH₄Cl
2NaHCO₃→Na₂CO₃+H₂O+CO₂
CaCO₃→CaO+CO₂
CaO+H₂O→Ca(OH)₂
Ca(OH)₂+2NH₄Cl →CaCl₂+2NH₃+2H₂O
となります。
NaClに水を加えてNaClを飽和させます。
そしてそこにNH₃(アンモニア)を吸収させます。
最後にCO₂(二酸化炭素)を吹き込んでいきます。
するとNaHCO₃(炭酸水素ナトリウム)という化合物が沈殿してきます。
このNaHCO₃(炭酸水素ナトリウム)を加熱するとNa₂CO₃(炭酸ナトリウム)ができ
同時にCO₂(二酸化炭素)が発生します。
でCO₂(二酸化炭素)は一段階目の反応の原料として回収し
再利用されています。
アンモニアソーダ法の利点は
二段階の反応でNa₂CO₃(炭酸ナトリウム)ができるところではありません。
「違うんかーい!」という声が返ってきそうですが・・・。
アンモニアソーダ法でできたCO₂(二酸化炭素)とか、
他の反応を使ってNH₃(アンモニア)が回収して再利用され使いまわすことができるのが利点です。
Ca(OH)₂+2NH₄Cl →CaCl₂+2NH₃+2H₂O
の反応によってNH₃(アンモニア)を作って
最初の式、NaCl+H₂O+NH₃+CO₂ →NaHCO₃+ NH₄Cl
で再利用するわけですね。
アンモニアソーダ法(原料)飽和塩化ナトリウム水溶液+炭酸カルシウム
(循環物)アンモニア、二酸化炭素 (生成物)炭酸ナトリウム+塩化カルシウム。
2Nacl+CaCO3→Na2CO3+CaCl2— 化学Ⅰ・Ⅱbot (@masukinngu3) April 7, 2022
原料のアンモニアは理論上ですが、
100%再利用することができます。
ハーバーボッシュ法ができる以前はアンモニアの値段がものすごく高額だったそうです。
当時高額だったアンモニアという気体をもう1回使いまわすことができるというのが
アンモニアソーダ法を行う最大の利点です。
⇒ハーバーボッシュ法のすごさとは?【高校化学】
アンモニアソーダ法が画期的なのは原料の再利用が徹底的に行えるところにあります。
特に値段の高いアンモニアを100%再利用できるというのは
当時、ものすごく画期的なことでした。
以上がアンモニアソーダ法(ソルベー法)の利点です。
ソルベーさんはアンモニアソーダ法で特許を取得して工場を取得して
莫大な利益を上げました。
そしてソルベーという会社を作りました。
アンモニアソーダ法が考案されたのが1861年でしたが
アメリカの会社に2009年に買収されるまで継続して
利用されてきました。
ちなみにNa₂CO₃(炭酸ナトリウム)って何の原料でしょう?
Na₂CO₃(炭酸ナトリウム)はガラスや石鹸の原料として利用されています。
あなたが普段何気なく見ている窓ガラス、
何気なく使っている石鹸はソルベー法でできたNa₂CO₃(炭酸ナトリウム)が
原料になっているんですね。
アンモニアソーダ法が考案された当時は繊維産業が盛んで
どんどんタオルなどの衣料品が作られていました。
すると洗濯に石鹸が必要になりますね。
大量に石鹸を作らないといけません。
ソルベー法以前、石鹸は高級品でした。
Na₂CO₃(炭酸ナトリウム)は木の灰から作られていました。
でも、そんなことやっていては間に合いません。
で、そこで登場したアンモニアソーダ法は
石鹸の大量生産を可能にしてくれて大きな利益をもたらしました。
ガラスや石鹸の原料になるNa₂CO₃(炭酸ナトリウム)の工業的製法がアンモニアソーダ法でした。
原料の再利用ができるのがアンモニアソーダ法の利点です。
今でもアンモニアソーダ法をやっていますが、
最近は水酸化ナトリウムに二酸化炭素を入れて
炭酸ナトリウムを作れるようになってきました。
水酸化ナトリウムは電気分解で作りますが、そんなに高額なものではありません。
なので、最近はアンモニアソーダ法はちょっと下火になってきています。
でも実際に日本でもアンモニアソーダ法を利用している工場はあります。