今回の記事では有機化合物の分離についてわかりやすく解説します。
そもそも有機化合物って何?と
疑問に感じている方は先にこちらをご覧ください。
⇒有機化合物とは?簡単に例を挙げながらわかりやすく解説
有機化合物の分離
もしかしたらテレビのニュースで見たことがあるかもしれません。
昔の話になりますが、2008年に『毒入り餃子事件』というのがありました。
だいたい10年~20年周期で「食品の提供方法」テロが起きてるな。
1977年:毒入りコーラ事件。缶や瓶、自販機の構造が変化。
1984年:グリコ森永事件。食品の梱包が変化。
2008年:毒入り餃子事件。製造工程厳密化。食品の回収事例も増加。
2023年:ペロペロ事件多発。飲食店のセルフ調味料の撤去。— atmk (@atmk) February 14, 2023
🥟、思い出すのが「毒入り餃子事件」
あの時スーパーから冷凍餃子が消え、国産材料を使った地元メーカーの餃子も売り切れる始末。そうなると無償に食べたくなるもので。
地元の中華料理屋に頼むのも良いけど手作りするかと材料買いに行けば、同じ考えの人が多いのか餃子の皮も売り切れ。— ぜんころ (@kapimio0626) August 7, 2020
餃子の中に毒が入っていたとしたら
餃子をミキサーで砕いて油に溶かして
これから解説する分離の方法を使って
有機化合物の一種であるメタミドホスといった毒物を
抽出することもできます。
私が獣医の学生だったころ、
毒性学の講義も受けていたので
この辺の分野はかなり詳しいです。
⇒プロフィールと当ブログを作ることになったきっかけ
工場、検出薬物使わず 毒入りギョーザ、何者かが混入か
==========================2008年02月02日03時03分
中国製冷凍ギョーザによる薬物中毒事件で、問題の商品から検出された有機リン系農薬成分メタミドホスについて、中国当局が、製造元の …
— Market_JP (@Market_JP) February 2, 2008
そんな感じで食品の中に何か混じっているとか
ダイオキシンの量を調べるとかといったときに
以下のような器具を使います。
上の器具を分液漏斗(ぶんえきろうと)といいます。
上の分液漏斗は手動で操作しますが、
分析のプロの現場では機械を利用して複数の分液漏斗を一斉に動かして
有機化合物を分離させることもできます。
ところで分液漏斗というのは上のフタが開くようになっています。
フタを開けて、中に有機化合物を入れます。
それからフタをしてコックをひねると入れた有機化合物がそのまま出てしまいます。
なのでコックを閉めておきます。
それでシャカシャカ分液漏斗を振ります。
詳しいやり方はこちらの動画を見ていただくとわかると思います。
話を元に戻します。
分液漏斗に水と油を入れます。
油としてエーテルをよく加えます。
具体的にはジエチルエーテルが多いです。
すると入れた水は水層(すいそう)に移動します。
それから油(ジエチルエーテル)はエーテル層に移動します。
ということで水と油(ジエチルエーテル)を加えると
油と水はきれいに分離され2層にわかれます。
有機化合物、たとえば安息香酸ですが
上記画像のように分子の形だと油に溶けエーテル層に行きます。
サリチル酸も分子の形だとエーテル層に行きます。
でも有機化合物がイオンになると水に溶けます。
上記画像でいうと左側のアニリンは分子ですが
水に溶けて右側になったものはイオンです。
なので水層に移動します。
こんな感じで有機化合物を水に溶かせばイオンにできるので
分液漏斗を利用することで
うまく分離することができるわけです。
こんな感じで有機化合物を分離することができます。
気をつけて欲しいのは分液漏斗を振るときです。
上記動画でも触れていますが
フタにも本体にも穴が開いています。
穴の位置を合わせると圧力がかかります。
さらにコックをひねれば圧力がかかって
中から溶液が流れ出ていきます。
なので振る時にはフタの穴と本体の穴の位置をずらしましょう。
それでコックは閉じた状態で逆さまにして振ります。
このときたまに二酸化炭素などのガスが発生したりするときがあります。
・分液漏斗が割れる
・フタが飛ぶ
・コックが飛ぶ
のいずれかが起こる可能性があります。
振っているとガスが発生し
圧力がかかってくるので
危ないことに気づけるはずです。
でも夢中で分液漏斗を振る人がいます。
その場合、ガスが発生した時に割れたり
フタやコックが飛んだりして
溶液が自分の体に飛んでくる可能性があります。
気をつけてください。
それからジエチルエーテルは沸点が低いです。
具体的にはジエチルエーテルの沸点は34.6°Cです。
かなり低いですね。
ちなみにエタノールの沸点は78.37°Cです。
ジエチルエーテルの沸点がいかに低いかよくわかるでしょう。
なので真夏だとジエチルエーテルをビーカーに入れて観察していると
煙になって気化します。
だから手の温度で気体になったりします。
そういった意味でガスが発生するときにそのまま分液漏斗を
振らないようにしましょう。
だからある程度分液漏斗を振ったら
逆さまの状態にして溶液が落ちないようにして
コックをひねり圧抜きをします。
ガス抜きをしないでひたすら振っていると
溶液が自分の目に入る可能性があります。
とくにコンタクトレンズをしていると
コンタクトレンズが目に貼りついたりする可能性があるので
気をつけてください。
それからたまにジエチルエーテルでなく
油としてクロロホルムを使ったりするときもあります。
クロロホルムを使うと水に沈みます。
つまり水の層とクロロホルムの層が
水層とエーテル層のときと逆になります。
だから水の層が上でクロロホルムの層が下になります。
間違えないようしましょう。
この記事では有機化合物の分離について詳しく解説しました。
以上で解説を終わります。