今回の記事では燃焼熱と生成熱の違いについて
熱化学方程式を使いながらわかりやすく解説していきます。
長い文章になるため、結論だけ知りたい方は
記事下の『燃焼熱と生成熱の違いまとめ』をご覧ください。
それでは解説します。
熱化学方程式とは?燃焼熱と生成熱の違いを理解する大前提
燃焼熱と生成熱の違いを理解するために
熱化学方程式の説明を先にさせていただきますね。
・黒鉛
・ダイヤモンド
がありますが、普通は黒鉛を利用して実験します。
ダイヤモンドは高価ですからね。
そこで炭素(黒鉛)を燃やすということを
熱化学方程式で表してみましょう。
C(黒鉛)+$O_2 $=$CO_2 $+394KJ
と『=』があると、
「あれ、『=』でなくて『⇒』じゃないの?」
って疑問に感じる人がいるんですよね。
私も受験生時代は思ってました。
⇒当ブログ管理人のプロフィール
『=』は方程式を表しています。
中学校や高校で勉強した方程式だって『=』で式をつなぎますよね。
2x+8=10
みたいな感じで。
だから熱化学『方程式』なので『=』でつなぎます。
C(黒鉛)+$O_2 $=$CO_2 $+394KJ
そして上記熱化学方程式は
『C(黒鉛)を燃やしたら熱が出る』という意味です。
熱化学方程式は方程式です。
左辺の持っているエネルギーと右辺の持っているエネルギーが等しいという意味になります。
なので、反応したということを表すだけなら『⇒』でOK。
でも、熱化学方程式は左右両辺の持っているエネルギーが等しいという意味で
『=』でつなぐ方程式になっています。
C(黒鉛)+$O_2 $=$CO_2 $+394KJ
それから『394KJ(キロジュール)』と『KJ』の『J(ジュール)はエネルギーの単位です。
KJのKは『キロ』で1000倍の意味です。
Kgだと1g(グラム)の1000倍ですよね。
燃焼熱と生成熱の違い
C(黒鉛)+$O_2 $=$CO_2 $+394KJ
ところで『394KJ』は反応熱のことです。
反応した時に出る熱のことを反応熱といいます。
反応熱にはいろんな種類があります。
つまり反応熱は総称です。
たとえば液体が蒸発して気体になったら蒸発熱や気化熱が発生します。
酸と塩基が中和した時に熱が出ますが
これは中和熱といいます。
C(黒鉛)+$O_2 $=$CO_2 $+394KJ
たとえば上記熱化学方程式において炭素が燃えた式であって
『+394KJ』ですから、これは炭素Cの燃焼熱といえます。
見方をちょっと変えると二酸化炭素$CO_2 $ができているので
二酸化炭素$CO_2 $の生成熱ということもできますね。
こんな感じで一つの熱化学方程式から
2つの熱(燃焼熱、生成熱)があるみたいな解釈ができることもあります。
・炭素Cが燃えた時の熱(燃焼熱)
・二酸化炭素$CO_2 $が出来上がった時の熱(生成熱)
と考えることもできるわけですね。
ところで
C(黒鉛)+$\frac{1}{2} $$O_2 $=$CO $+110KJ
と書くと「$\frac{1}{2} $』って分数じゃないの?
係数に分数を使っちゃいけないんじゃないの?」って疑問に感じた方、いませんか?
反応式では分数はダメです。
でも、熱化学方程式では分数を使っても大丈夫です。
C(黒鉛)+$\frac{1}{2} $$O_2 $=$CO $+110KJ
上記熱化学方程式では『燃焼熱』が発生しているように見えますね。
でも、ここかがら超重要です。
燃焼熱は物質が『完全燃焼』したときの熱です。
完全燃焼ということは二酸化炭素になる必要があります。
$CO $(一酸化炭素)というのは不完全燃焼です。
なので、燃焼熱の定義に当てはまりません。
だから上記熱化学方程式では燃焼熱はありません。
$CO $(一酸化炭素)の生成熱だけが発生します。
C(黒鉛)+$\frac{1}{2} $$O_2 $=$CO $+110KJ
ところで方程式は足したり引いたりできます。
これはヘスの法則によります。
反応熱はどんな反応経路をとっても一定という法則のことです。
もう少し詳しくいうと、化学反応によって発生あるいは吸収される熱量は
反応の最初と最後の状態だけで決まるため、反応途中の状態は無関係ということ。
総熱量不変の法則ということもあります。
C(黒鉛)+$\frac{1}{2} $$O_2 $=$CO $+110KJ・・・(2)
もっと簡単いうとヘスの法則によって上記熱化学方程式を
中学校で習った連立方程式みたいな計算をしてもOKということです。
すると(1)ー(2)より
(計算したマイナスは移項してプラスにしましょう)
となります。
この284KJは何でしょう?
二酸化炭素$CO_2 $ができていますね。
なので「二酸化炭素$CO_2 $の生成熱ができている!」って言ったら×になります。
生成熱というのは物質がその構成元素の『単体から』生成するもののことです。
最初にお見せした
C(黒鉛)+$O_2 $=$CO_2 $+394KJ
は炭素C(黒鉛)の単体でしたから生成熱といってもOKでした。
C(黒鉛)+$\frac{1}{2} $$O_2 $=$CO $+110KJ
も炭素C(黒鉛)の単体でしたから生成熱といってOKでした。
でも、
一酸化炭素$CO $は化合物です。
CとOという2種類の元素からできていますね。
生成熱は単体から生成するものですから、定義に当てはまりません。
よって、
から生成熱は発生しません。
でも、$CO_2 $ができています。
『完全燃焼』していますね。
だから燃焼熱は発生しています。
正解を書くとしたら『一酸化炭素$CO $の燃焼熱が発生している』となります。
燃焼熱と生成熱の違いまとめ
どうでした?生成熱と燃焼熱はやっかいです。
「生成熱と燃焼熱の違い」を知りたくて検索する人は多いです。
なので、以下、燃焼熱と生成熱の違いをまとめましたので
しっかりと理解して覚えておいてくださいね。
・生成熱とは物質がその構成元素の『単体から』生成するもののこと
・燃焼熱は物質が『完全燃焼』したときの熱
燃焼熱は完全燃焼が必要だから二酸化炭素にならないといけません。
生成熱は必ず単体から作らないといけません。
きちんと規則を知っておかないと問題が出た時に
ちゃんと熱化学方程式が作れませんからね。
よく覚えておきましょう。
以上で解説を終わります。