今回の記事では繊維の種類を一覧形式でわかりやすく解説していきます。
繊維とは?簡単に説明します
繊維って何か?知っていますか?
繊維というのは簡単にいうと糸状に加工して利用するもののことです。
たとえば服を作るための原料となる糸なんかを作るときに使われるのが繊維です。
繊維のおおまかな一覧
・天然繊維
・化学繊維
に分かれます。
天然繊維いうのはそのままで天然物そのものです。
植物由来のものとか動物由来のものがあります。
とはいえ、天然からとれる高分子化合物を繊維状に加工してそのまま衣類を作る場合を天然繊維といいます。
くどいようですが、
・植物繊維
・動物繊維
の2つがあります。
そして
・麻
・木綿
です。
・羊毛
・絹
です。
次に化学繊維ですが、化学繊維とは人工的に合成したものと考えて良いです。
ただ全部が全部人工的に合成したものではありませんが、
もう少し詳しく説明させていただきますと、人間の加工が入っているものが化学繊維です。
・再生繊維
・半合成繊維
・合成繊維
と3種類あります。
天然繊維の種類一覧
ではまず天然繊維から解説しますね。
先ほど解説しましたように天然繊維には植物繊維と動物繊維があります。
植物繊維の代表例は麻と木綿です。
麻や木綿というのはそのまま植物から採取できるのですが、
成分としてはセルロースという高分子でできています。
セルロースが多数平行に並んでできています。
植物繊維というのはセルロースという高分子が何千本もの束になって1本の糸を作っているんです。
もう少し具体的に言いますと、β―グルコースがたくさんつながってできたものです。
そして木綿は植物の綿から、麻は植物の麻から得られます。
それから動物繊維の具体例は羊毛と絹です。
動物繊維というのはタンパク質を主成分にする繊維です。
絹(シルク)は蚕の吐き出したまゆ糸からできる繊維です。
・セリシン
・フィブロイン
という2種類のたんぱく質でできています。
蚕が吐き出した糸ですが、
フィブロインというたんぱく質が周りにセリシンというたんぱく質で囲まれた構造をしているのです。
これがいわゆる生糸(きいと)ってものなのです。
フィブロインの周りにセリシンというたんぱく質が取り囲んだものを生糸といって
このセリシンだけを剥ぎ落とすと、フィブロインだけが残りますね。
これが絹糸です。
絹糸は光沢を持った糸になります。
とはいえ、生糸も絹糸もどちらもタンパク質でできている点は共通です。
あとは羊毛ですが。
羊毛は羊の毛でできている繊維です。当たり前の話ですが。
羊毛もタンパク質でできています。
具体的にはケラチンというたんぱく質で羊毛はできています。
とはいえ、絹糸と同様、羊毛も動物繊維はタンパク質でできていることを
理解しておきましょう。
逆に植物繊維はセルロースでできている点が
動物繊維との違いになります。
・植物繊維はセルロースでできている
・動物繊維はタンパク質でできている
です。
化学繊維の種類一覧
・再生繊維
・半合成繊維
・合成繊維
と3種類あります。
再生繊維というのは、実はセルロースそのものなのですが、
木の皮(樹皮)からセルロースを採取してくると再生繊維となります。
木の皮(樹皮)なんてまったく糸みたいな形になっていませんね。
硬いですよね。
この木の皮からセルロースだけを溶かしだして糸状に加工すると再生繊維ができます。
ですから、再生繊維はセルロースそのものなのですが、
セルロースだけを溶媒に溶かしだして集めたものと
考えると理解しやすいでしょう。
・銅アンモニアレーヨン
・ビスコースレーヨン
の2つに分けられます。
銅アンモニアレーヨンとビスコースレーヨンの違いというのは
どういう溶媒に溶かすか?による違いとなります。
溶媒の種類で名前が変わっているだけで、セルロースそのものということは
どちらも同じです。
ビスコースレーヨンというのは二硫化炭素という溶媒を使ってできます。
銅アンモニアレーヨンというのは銅アンモニア溶液という溶媒を使ってできます。
ちなみに銅アンモニア溶液は水酸化銅とアンモニア水の混合液ですが、
シュワイツァー試薬を使うのが特徴的です。
こんな感じで再生繊維は使う溶媒の種類で名前が分かれていますが、
結局でき上げるものはセルロースそのものです。
木の皮から糸を作ろうということで、これが再生繊維です。
次に半合成繊維について解説します。
半合成繊維はセルロースの一部に化学反応を加えたものです。
つまり、半分合成したものです。
セルロースというのは天然物由来のもので、そこに化学反応を加えて作るから半合成繊維といいます。
たとえば、セルロースに無水酢酸でアセチル化してできる
アセテートが具体例です。
アセテートはスーツの裏地(光沢のある部分)や
制服のブレザーの裏地に光沢のある物が使われていたら、それはアセテートの可能性が高いです。
こんな感じでスーツやブレザーの裏地に使われる光沢のある繊維がアセテートです。
あとは光沢のあるカーテンにも使われています。
・再生繊維は木の皮からとれたセルロース
・半合成繊維はセルロースの一部に化学変化を加えたもの
です。
次に合成繊維について説明しますね。
合成繊維というのは1から10まで人工的に作ったものです。
完全に人工的に合成した繊維だということです。
単量体を用意して付加重合とか縮合重合とかで
原料をつなげていって作った高分子を繊維状に加工したものが合成繊維です。
⇒重合とは?わかりやすく解説
⇒付加重合とは?図を使ってわかりやすく解説
⇒縮合重合とは?例を挙げながらわかりやすく解説
すべて完全に人工的に合成した繊維が合成繊維です。
合成繊維の具体例としてはポリアミド系合成繊維があります。
ポリアミド系合成繊維だとナイロン66(ナイロンロクロクと読みます)が有名ですね。
ナイロン66はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸が縮合重合を繰り返してできる合成繊維です。
アミド結合を繰り返すからポリアミドといわれます。
ナイロン66の具体例はパンストです。
それから他にもアラミド繊維が有名です。
アラミド繊維は塩化水素が抜け落ちる縮合重合を繰り返してできています。
そしてアラミド繊維はテレフタル酸ジクロリドとp-フェニレンジアミンからできています。
ナイロン66と比べてアラミド繊維はかなり強い強度を持っています。
つまり、アラミド繊維は丈夫な繊維だということです。
なので、アラミド繊維の具体例は防弾チョッキや消防服(防火服)や宇宙船の材料など、
強度が必要なものに使われています。
同じ合成繊維でもパンストに使われるナイロン66で消防服を作っても
火災現場に飛び込めませんよね。
なので、機械的な強度が必要なものにアラミド繊維は使われます。
でもその分、アラミド繊維は重いです。
丈夫ということおは重いし硬いです。
他にも合成繊維の具体例を挙げますね。
他にはナイロン6があります。
ナイロン6は日本で合成された繊維ですが、ε(イプシロン)カプロラクタムが原料です。
これが最終的にナイロン6になります。
ε(イプシロン)カプロラクタムは環構造なのですが、
ナイロン6という鎖状の構造になるので、
開環重合(かいかんじゅうごう)といいます。
炭素数が6のナイロンなのでナイロン6といわれています。
これもアミド結合を繰り返しているからポリアミド繊維の一つになります。
合成繊維は他にもポリエステル系合成繊維があります。
エステル結合を繰り返してできる繊維だからポリエステルです。
テレフタル酸とエチレングリコールの縮合重合によってできるポリエチレンテレフタラート(PET)が代表例です。
ポリエチレンテレフタラート(別名、PET)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
⇒縮合重合によるPETは犬猫のペットではない!詳しく解説
それ以外にも合成繊維としてアクリル繊維やビニロンなどがあります。
アクリル繊維はアクリロニトリルの付加重合ででき、セーターやマフラーに使われます。
ビニロンは日本で合成された繊維で、
吸湿性繊維の一種です。
水分を吸収する繊維です。
だから肌着なんかに利用されます。
作った人は桜田一郎(さくらだいちろう)さんです。
京都大学の教授をやっていました。
ビニロンというのはポリビニルアルコールを一部加工して作る合成繊維ですが、
ポリビニルアルコールはヒドロキシ基をいっぱい持っているので
水となじみのいい吸湿性繊維を作れるのではないか?ということから
研究が開始されました。
そもそもビニルアルコールを付加重合させることができたなら
簡単にポリビニルアルコールを作ることはできるのでしょう。
でも、ビニルアルコールは極めて不安定な化合物です。
だから一瞬にしてアセトアルデヒドという付加重合できない形に変わってしまいます。
なので、ポリビニルアルコールを合成するのに
遠回りをしないといけません。
とにかく遠回りしてビニルアルコールからポリビニルアルコールができます。
ポリビニルアルコールですが、ヒドロキシ基をたくさん持つから
吸湿性の繊維出来上がると思った方も多いでしょう。
もちろん吸湿性はあります。
ですが、ヒドロキシ基の数が多すぎて水に溶けてしまうのです。
水に溶ける繊維って服に使えません。
洗濯機に入れたらなくなってしまいます。
ということで、このあと、水に溶けにくくするためにヒドロキシ基の数を減らす作業をします。
その作業とはホルムアルデヒド水溶液を使ってアセタール化する作業のことです。
これによりヒドロキシ基の数を減らしています。
結果、水に溶けにくくなります。
これでできるのがビニロンという吸湿性の繊維です。
ちなみに上記がビニロンですが、なぜアセタール化と呼ばれるか?というと
ビニロンの構造式の中の上記の構造をアセタール構造といいます。
このアセタール構造を作る反応なのでアセタール化と呼ばれています。
ヒドロキシ基を減らすのが目的になっています。
ちなみにビニロンは水に溶けにくいが
ヒドロキシ基は3~4割程度残っているので吸湿性に優れているという特徴があります。
以上で繊維の種類についての解説を終わります。