この記事では
クロム酸イオン($CrO_4^{2ー} $)による沈殿について解説します。
クロム酸イオンによる沈殿
クロム酸イオンとニクロム酸イオンの関係
クロム酸イオン($CrO_4^{2ー} $)というのは
ニクロム酸イオン($Cr_2O_7^{2ー} $)の親戚なのです。
覚えていますか?以前解説した酸化還元の半反応式のところで登場しました。
⇒半反応式の問題を解きながら作り方も覚えよう!
ところでニクロム酸イオン($Cr_2O_7^{2ー} $)は橙色です。
ちなみに化学ではオレンジ色のことを橙色といいます。
それからニクロム酸イオン($Cr_2O_7^{2ー} $)は酸性で安定です。
酸性で安定ということはアルカリ性($OH^{ー} $)にしたら
不安定だということになります。
ということでアルカリ性にしたら($OH^{ー} $を加えたら)
不安定になって反応してしまいます。
$Cr_2O_7^{2ー} $+$2OH^{ー} $⇒$2CrO_4^{2ー} $(クロム酸イオン)+$H_2O $
という反応が起こりクロム酸イオンが登場するのです。
こんな感じでニクロム酸イオンとクロム酸イオンは親戚関係にあります。
・ニクロム酸イオン・・・橙色で酸性で安定
・クロム酸イオン・・・黄色で塩基性で安定
です。
そりゃそうですよね。
ニクロム酸イオンにアルカリ性を加えれば
アルカリ性で安定なイオン(クロム酸イオン)に変化しますよね。
だから逆にクロム酸イオンを酸性にすると
酸性で安定なニクロム酸イオンに戻ります。
こんな感じで酸性アルカリ性によって
ニクロム酸イオンとクロム酸イオンを行ったり来たりするのです。
ではここからが本題です。
クロム酸イオンによる沈殿を3つご紹介します。
クロム酸イオンによる沈殿を3つご紹介
クロム酸イオンというのは元々黄色いです。
なので出てくる沈殿も黄色いものが多いです。
こういう前提知識を持っておくと
覚えやすくなりますよ。
まずはクロム酸鉛($PbCrO_4 $↓)です。
黄色い沈殿ができます。
無機定性分析その1
混合溶液から出たろ液
なぜか黄緑色になるろ液
クロム酸鉛(II)の黄色沈殿
紫外線によって黒色になった銀イオン pic.twitter.com/hP3Wpzbvwa— とあ (@toa_20031102) October 17, 2022
2つ目はクロム酸バリウム($BaCrO_4 $↓)
薄い黄色の沈殿ができます。
ここまで黄色い沈殿でしたが
3つ目の沈殿は黄色ではありません。
こういう例外は意識的に覚えておきましょう。
3つ目の沈殿はクロム酸銀($Ag_2CrO_4 $↓)です。
クロム酸銀の色は赤褐色(赤茶色)です。
化学的には赤茶色は赤褐色といいます。
左から
二クロム酸イオン
クロム酸イオン
クロム(Ⅲ)イオン
クロム酸バリウム
クロム酸銀
クロム酸鉛 pic.twitter.com/1A2OWpG44n— 高田高校科学部化学班 (@scienceTKD) August 7, 2021
もともとクロム酸イオンは黄色ですから
クロム酸鉛($PbCrO_4 $↓)やクロム酸バリウム($BaCrO_4 $↓)みたいに
黄色い沈殿が多いわけですが、クロム酸銀($Ag_2CrO_4 $↓)だけは赤褐色です。
クロム酸イオンによる沈殿はそんなにメジャーではありません。
でも突破口になります。
なぜか?
黄色と赤褐色の両方を出せるイオンはまずありません。
クロム酸イオンだけです。
なので突破口になるイオンではあります。
今回の解説は以上になります。
別の沈殿についての解説は以下をご覧ください。