・水のイオン積はなぜ一定に保たれるのか?
について解説していきます。
水のイオン積が一定に保たれるのはなぜ?
水のイオン積は水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度をかけ算すると
必ず『25℃』の状態では
これを式で表すと
【
となります。
これは平衡定数です。
平衡定数というのは温度が決まれば一定値ということです。
水のイオン積では25℃という条件がついていて
このとき一定値となるのです。
さらにもっと詳しく水のイオン積が一定になる理由について深堀していきますよ。
また水のイオン積の単位は
です。
二乗がついていて単位としては珍しいですね。
ではどうしてこんな単位になるのでしょう?
水のイオン積である【
それぞれmol/l(モルパーリットル)です。
【
もう一度25℃における水のイオン積を示しますよ。
【
ですね。
【
【
よくわからない方は以下の記事で復習していただけると理解が進むと思います。
ここで強い酸、たとえば塩酸(HCl)を例に考えてみましょう。
塩酸(HCl)には
強酸ですからね。
ここに本文を入力
当然、塩酸だと強酸だから
では
「いるわけないでしょ!」って思いませんでしたか?
濃い塩酸の中ですからね。
そう思うのは当然だと思います。
酸の中に塩基(アルカリ性)の
そう考えるのは当然です。
ですが、
塩酸は塩化水素が水に混ざった混合物でしたね。
ということです。
ところで水の中には
なので、いくら強酸の
『塩酸』ということはそこに水が存在している以上、
もし
【
上記は水のイオン積ですけど、もし
つまり0だったら【
そうなると水のイオン積は一定になりません。
でも、さっきいったように塩酸は水とともに存在するので
水のイオン積は0にはなりません。
また、強アルカリである水酸化ナトリウムNaOHですが、
もちろん
水に溶けた状態で存在しているからです。
つまり、
【
は絶対に0にはならないってことを覚えておいてください。
ここまでよろしいでしょうか?
ここまで理解できたら以前解説した濃度平衡定数Kcを思い出してください。
今回は水のイオン積なので
で、温度が25℃と一定なので化学平衡が成り立っています。
ということは濃度平衡定数をKcとすると
Kc=【
となり、温度が一定という前提があるので定数になります。
化学平衡が成り立っているからです。
ここまでを前提に
塩酸などの強酸や水酸化ナトリウムなどの強塩基の水溶液の場合はどうでしょう?
水に塩化水素を加えて塩酸になった場合、
右辺の
するとルシャトリエの法則により
変化を減少させる方に反応が進みます。
だから左側に反応が進みます。
結果、一度増えた
水のイオン積は一定になるのです。
同様に強アルカリの水酸化ナトリウムであっても
反応が左側に進み、平衡状態に落ち着くため
水のイオン積は一定になるのです。
よってどんなことがあっても
温度が25℃で一定という前提があるなら水のイオン積は一定になります。
水のイオン積:中性とは?
もし「中性って酸でもないし塩基でもない、ど真ん中の数字でしょ!」
って思ったとしたら、それはちょっと違うというしかありません。
中性は【
思ったら大間違いです。
記事の途中でも解説しましたように
塩酸という強酸の中でも【
水酸化ナトリウム水溶液という強塩基の中でも【
それくらいの話なので中性であっても
当然、【
0(ゼロ)ではありません。
つまり、中性という状態は【
では中性って【
どんな感じなのでしょうか?
答えとしては
【
という状態が中性です。
つまり中性の定義は【
また水のイオン積は
【
ですから、
【
これは指数の計算という高校数学を理解していないと
ピンと来ないかもしれませんね。
たとえば
2の2乗と2の3乗をかけたら2の5乗となって
2乗と3乗の部分は足し算します。
実際、2の2乗は4で2の3乗は8なので
4×8=32となっていて矛盾していませんね。
これと同様
さっきと同様-3乗と―2乗なので―3-2=-5としただけです。
こんな感じで同じ2で乗数だけが違う掛け算の場合は
乗数のところだけ足し算引き算することができます。
なので水のイオン積は
【
で、【
それぞれ
―7ー7=ー14なので。
水のイオン積からpHを計算してみよう
pH=ーlog₁₀【
という式で表されます。
pHというのは上記式からも明らかなように
【
また対数(log)は常用対数です。
だから底(てい)は10です。
logの右側に小さい数字で10が入ります。
が、常用対数では底の10は省略するので
pH=ーlog₁₀【
ではなくpH=ーlog【
酵素が最もよく働くpHのことを[ 最適pH ]という。
★pHは水素イオン濃度の逆数の常用対数です。
★pH = -log[H⁺]
水素イオン濃度の常用対数(log₁₀X)にマイナスをつけたものです。— 高校化学 高分子bot 大学受験 有機化学アプリ (@kagaku_k_test) September 18, 2022
ということで水素イオン濃度【
あとは簡単な数学でpHを算出することができます。
では中性のpHはいくらでしょう?
先ほど解説したように中性の場合、【
でしたね。
なので、pH=ーlog【
pH=ーlog
となり、中性のpHは7だとわかりますね。
よくわからない方はlog(対数)の復習をしてくださいね。
対数と水のイオン積がわかれば
中性のpHって自分で導くことができるわけですね。
水のイオン積がわかれば酸性と塩基性の定義もわかる
酸性は【
塩基性は【
だとわかりますね。
なぜなら中性は【
酸性とか塩基性は【
だから酸性は【
塩基性は【
なので、先ほどのpHの計算をしたら
酸性は【
pHは7より小さくなりますね。
なぜなら水のイオン積は
【
です。
中性は
酸性は【
【
だって
10のマイナス6乗の方が10のマイナス7乗より大きいですよね。
だからたとえば酸性ということで【
pH=ー
同様に塩基性だと【
pH>7となるわけです。
たとえばpHが8とか9とかは塩基性です。
大丈夫でしょうか?
こちらの記事では酸、塩基の別の定義について解説しているのでご覧ください。